耳が痛い、聞こえづらい原因と治療法

耳が痛い、聞こえづらい原因と症状

人間が音を聴くためのしくみについて、まず説明しましょう。外から来た音が外耳に入って奥の鼓膜を振動させ、その振動が中耳の耳小骨(じしょうこつ)、内耳の蝸牛(かぎゅう)に伝わっていきます。蝸牛では振動を電気信号に変えて聴神経に送り、それが脳に伝わって内容を理解します。耳の痛みや聞こえづらさは、こうした耳の各部分に起きた病気が主な原因になっています。

耳垢

耳垢が溜まることで、耳栓をしているように聞こえづらくなる場合があります。また、耳垢が溜まることで外耳炎を引き起こしたり、外耳道真珠腫という特殊な状態に進展することがあるため注意が必要です。耳垢には乾いたものと湿ったものがありますが、これは遺伝で決まり、日本人では10人に1人の割合で湿った耳垢(あめ耳、軟耳垢)が認められます。乾いていても湿っていても正常であり、問題はありません。耳垢は、外耳道の皮膚にある皮脂腺などから出てくる分泌物に、古くなった表皮や外から入ってきたホコリが混ざってできています。この表皮は、鼓膜付近から外側に約1ヶ月かけて移動してきた外耳道の皮膚であり、最後ははがれ落ちるため外耳道の奥に耳アカが溜まることは通常ありません。

急性中耳炎

鼻の奥には、耳管という耳と鼻をつなぐ管があります。ここを通った細菌が鼓膜の奥にある中耳で炎症を起こし、膿が溜まるのが中耳炎です。中耳炎はプールなどで水が耳に入ってなると思っている方もいますが、実際には風邪などによる鼻詰まりが原因でかかる疾病です。大人がなることもありますが、幼児に多い病気です。膿が溜まって鼓膜が赤く腫れ、とても強い痛みがあります。
風邪をひいて耳が痛くなった、耳から分泌液が出てきたといった症状があったら、耳鼻咽喉科を受診してください。また、幼くて症状をうまく伝えられない子どもの場合、高熱があって機嫌が悪くなる、耳に触れられるのを嫌がるなどがあったらご相談ください。

滲出性中耳炎

急性中耳炎のような強い毒性を持った細菌ではなく、弱い毒性の細菌(弱毒菌)や細菌の菌体成分が原因で、滲出液という分泌物が鼓膜の奥にある中耳に溜まる病気です。副鼻腔炎(蓄膿症)、アレルギー性鼻炎、アデノイドなどに併発することもあります。飛行機など高所に登った時のように耳が詰まった感じがしたり、自分の声がこもったように響いて聞こえる場合があります。痛みがないので、幼い子どもの場合気付かれにくいのですが、呼びかけへの反応がなかったり、テレビの音量を上げるなどがあったら注意してください。
滲出性中耳炎の問題は、今現在の難聴以外に、放置による将来の真珠腫形成や癒着性中耳炎などの問題があります。早めに受診してください。なお、滲出性中耳炎については手術を含めて、こちらで詳しく解説していますので、ご覧ください。

慢性中耳炎

鼓膜に穴が開いて耳から分泌液が出てくる耳だれを繰り返す慢性化膿性中耳炎、そして骨が溶けていく真珠腫という2つの病気に大きく分かれます。難聴や耳だれが起こりますが、骨が溶けていく真珠腫では、めまいや顔面神経麻痺、髄膜炎などを起こす可能性があり、早めの受診が重要です。耳だれと共に耳の聞こえが悪くなってきた、風邪を引いた時に耳だれがあるなどの症状に気付いたら、すぐに耳鼻咽喉科で診てもらいましょう。特に真珠腫は手術の必要がありますが、痛みなどがないまま進行している場合が多いので注意しましょう。
慢性中耳炎については、手術を含めて、こちらで詳しく解説していますので、ご覧ください。

外耳炎

耳の穴の入口から鼓膜までの間を外耳道と呼び、ここの皮膚に起こる炎症が外耳炎です。ほとんどは、耳掃除などで耳を強くかいたりして傷付いた皮膚に細菌が感染したことが原因です。症状には、腫れや赤み、痛みのほか、耳だれやかゆみ、耳の詰まる感じ、聞こえにくさなどがあります。炎症がひどくなった場合、口を開けるだけで痛みが出たり、眠れないほど痛くなる場合もあります。細菌だけでなく、カビが繁殖して強いかゆみを生じさせる痛外耳道真菌症も外耳炎に含まれます。

難聴

耳鳴りの症状が出始めて聞こえが悪くなって来たり、早口の言葉が聞き取れなくなったり、耳が詰まる感じがして聞こえにくくなったりしたら、すぐに受診しましょう。また、自分で気付かないことも多いため、家族をはじめとする身近な相手から「耳が悪くなったのでは」と言われたら、検査を受けることをお勧めしています。
難聴にはいくつかの種類があり、検査でどの部分に問題があるのかをしっかり調べて適切な治療を受ける必要があります。外耳、中耳に問題がある伝音難聴(でんおんなんちょう)は、手術で改善する可能性があります。内耳より奥の部分に問題がある感音難聴(かんおんなんちょう)は、手術治療が基本的に不可能になっています。また、蝸牛に問題がある場合、音が聞こえなかったり、ひずんで聞こえる場合もあります。伝音難聴と感音難聴は併発しているケースも多いため、しっかりとした検査と診断が重要になってきます。

耳鳴り

実際には音がしていないのに、聞こえる状態を耳鳴りと呼びます。金属音や蝉のなく音として表現されるケースが多いのですが、全く違う音が聞こえている場合もよくあります。聞こえが悪くなって耳鳴りを併発する場合がほとんどですが、そうでないこともあります。現実には音がなく、本人にしか聞こえない自覚的耳鳴(じかくてきじめい)のほか、耳付近や耳管などで実際に何らかの音がしている他覚的耳鳴(たかくてきじめい)がありますが、ほとんどは自覚的耳鳴です。
自覚的耳鳴はストレスや睡眠不足、疲れなどによって大きくなる場合があり、耳鳴りがうるさくて日常生活に支障が起こってくることもあります。

めまい

周囲がぐるぐる回っているように感じたり、船に乗っているような感じがするめまい。めまいの症状を起こす病気は20種類以上もあり、治療には正確な診断が必要な病気です。原因を大きく2つに分けると、耳によるものと脳によるものがあります。耳によるめまいでは、バランスを感じる三半規管が調子を崩すことによって起こるケースが多くなっています。ストレスや睡眠不足、疲れによってめまいの症状が現れることもよくあります。

メニエール病

めまいに加え耳鳴り・難聴・耳のつまった感じなど耳に異常があったり、めまいが数時間も続いたり繰り返す場合、メニエール病が疑われます。数十秒から数分程度であれば、メニエール病の可能性はほとんどありません。耳の奥にある内耳にンパ液が溜まり過ぎることが原因の病気です。めまいの他に耳鳴りや難聴、耳のつまった感じを一緒に起きることがあり、吐き気を感じる場合もあります。1回のめまいが数時間も続くことも珍しくなく、半日以上続くこともあります。数日から数ヶ月の間隔でめまいの発作を繰り返すことが多く、進行に従って難聴も進行することがあります。

良性発作性頭位めまい症

内耳にある加速度を感じ取る耳石という器官に起こる病気です。めまいの症状が起こる場合、最もよくある病気です。頭を動かすと数十秒のめまいがあったり、じっとしていると治まり動くと再びめまいを繰り返したら、良性発作性頭位めまい症の可能性があります。
これはなんらかの原因で耳石が外れることで起こる病気です。外れた耳石のかけらが三半規管に入ってしまい、頭を動かすと三半規管の中を動き回ってめまいを引き起こします。頭を動かすことがきっかけとなって数秒から数十秒のめまいが起こるため、起床の際や、寝返りなどによってめまいを起こすことが多くなります。吐き気を覚える場合はありますが、意識が亡くなることはなく、じっとしているとめまいはやがて止まります。

低音障害型難聴

音が詰まっているが聞こえ自体は悪くない、音が耳の中で響くなどの症状があったら、低音障害型難聴の可能性があります。さらに、症状が悪化したり改善したりを繰り返す場合には、メニエール病になる場合もあります。低い音が急に聞こえにくくなる病気で、比較的女子に多く、ストレスや睡眠不足、疲労などによって発症する場合があります。音が割れたように感じることもあります。

突発性難聴

音を感じ取る内耳の調子が悪くなって起こりますが、原因不明の病気であり、文字通り突発的に、いきなり片方の耳の聞こえが悪くなります。聞こえにくさの程度はさまざまですが、それ以外に耳の詰まる感じやめまいを併発することもあります。ストレスや睡眠不足、疲労などがあると発症しやすいという説もあります。

耳が痛い、聞こえづらい症状の治療方法

耳垢

耳垢が硬く固まっている場合、触れるだけで痛みがある場合もありますが、耳垢水(じこうすい)という薬剤を注いで耳垢を柔らかくしてから取り除くことで、痛みなく処置できます。完全に詰まっている場合にも、この方法で耳垢を取り除きます。

急性中耳炎

抗生物質の内服や、耳に直接入れる点耳薬を使った治療を行います。近年になって、抗生物質が効きにくい細菌が増えているため、細菌検査を行って使用する薬を変更する場合もあります。
痛みや発熱などの症状が強い場合には、鼓膜を切って、膿を出すこともあります。こうした治療を受けて痛みが無くなった際にも、医師から処方された薬をきちんと飲む必要があります。薬を止めてしまうと細菌が抵抗力をつけてしまい、中耳炎が悪化したり、治るのに時間がかかる可能性があります。また、鼻と耳はつながっており、風邪などで鼻水が出ていると中耳炎も治りにくいので、鼻水などの症状が治まるまできちんと治療を受けましょう。

滲出性中耳炎

耳と鼻は耳管という管でつながっていて、中耳に溜まった滲出液はここを通って鼻に排出されます。鼻水が多いと耳管が塞がって中耳から贈られた滲出液が鼻に抜けないので、中耳炎が治りにくくなってしまいます。滲出性中耳炎では特に、鼻の治療を同時に受けることが重要です。内服薬や処置、鼻の治療でも効果が現れない場合には、鼓膜を切ったり、鼓膜にチューブを入れるなどの手術を行って、空気が常に中耳に入るようにする必要があります。

慢性中耳炎

慢性中耳炎は、一般的な抗生物質が効きにくい細菌によるものも多いため、細菌検査をして適切な抗生物質や点耳薬を使っていきます。治りにくいので治療には根気が必要であり、定期的に治療を受けないとますます進行する可能性があります。耳だれがある場合には、それを吸い取るなどして鼓膜の奥まで乾いた状態を保つようにします。聴力検査で難聴の程度を把握する必要があり、また真珠腫の場合は周囲の骨を溶かして拡がっていく危険性があるため、どこまで進行しているかをCTで正確に調べます。年齢や難聴の程度、病気の広がり具合を検査した上で、手術を含めた治療方針を決めていきます。

外耳炎

外耳炎も一般的な抗生物質が効きにくい細菌によるものも多いため、細菌検査をして適切な抗生物質や点耳薬を使っていきます。治ってから硬いもので耳掃除をすると外耳道が傷付いて外耳炎が再発してしまうため、耳かきの回数を減らしたり、綿棒などやわらかいものを使った耳掃除をお勧めしています。

難聴

聴力検査、チンパノメトリー検査、耳小骨筋反射検査という耳の検査で伝音難聴や感音難聴など、難聴のタイプを調べます。レントゲンで聴神経に問題が無いかを調べることもあります。慢性中耳炎などによる伝音難聴であれば手術治療が有効ですし、突発性難聴や老人性難聴などの感音難聴の場合には、必要に応じて薬の処方や補聴器による治療を行います。伝音難聴と感音難聴が同時に起こっている場合もあるため、年齢や生活環境なども考慮しながらその方にとって最善の治療方法を相談して治療を進めます。

耳鳴り

聴力と関係した耳鳴りが多いので、聴力検査のほか、チンパノメトリー検査で鼓膜の状態を調べ、レントゲンで聴神経を調べる検査などを行います。耳鳴りは原因がわからないため、治療法も確立していません。一般的なのはビタミン剤や安定剤などによる治療で、漢方薬や、注射などを使う場合もありますが、完全に耳鳴りが消えることは稀です。耳鳴りと脳腫瘍の因果関係は不明ですが、経過により脳腫瘍の検査を行うこともあります。

めまい

めまいに特有の眼の動きをみる眼振(がんしん)検査や、聴力検査、レントゲン検査、血液検査などを行います。めまいを症状とする病気は多いので、原因を調べるために様々な検査が必要になります。原因が耳にあるめまいの場合、めまいを抑える薬を内服し、安静を保つようにすれば徐々にめまいが軽くなっていきます。めまいに伴って意識がなくなったり、ろれつが回らなくなったり、手足を動かしにくかったりする場合には、脳が原因でめまいが起こっている可能性があるため、内科や脳外科を受診してください。

メニエール病

めまいに特有の眼の動きをみる眼振(がんしん)検査を行い、難聴や耳鳴りを伴っている場合には聴力検査なども行います。典型的なメニエール病の場合には、最初から診断できます。そうでない場合には、正しい診断のために経過を観察する必要があります。
メニエール病の治療は、内耳のリンパ液が溜まり過ぎないよう、尿を出しやすくする利尿剤を使います。症状の程度によってはステロイドを使う場合もあります。治ったと思っても再発することが多いので、耳の聞こえ方に違和感があったら早めに耳鼻咽喉科を受診しましょう。また、「内科の医師にメニエールと言われた」と来院される患者さまもけっこう多いのですが、実際に専門的な検査をしてみると違っている場合もよくあります。めまいがあったら耳鼻咽喉科を受診してきちんと調べてもらいましょう。

良性発作性頭位めまい症

かなり激しいめまいの症状があるためとても怖く感じますが、実際には耳石のかけらが三半規管に入ってしまったことで起こっているだけですので、数日から数週間で耳石のかけらが溶けることにより自然に治りますし、それほど心配する必要はありません。他の病気でないかを確認するために聴力検査やレントゲン検査、血液検査等を行い、眼振(がんしん)検査で診断をします。強いめまいがある間はめまいを軽減する薬を用いたり、三半規管の中に入ってしまった耳石のかけらを元に戻す治療を行います。こうした治療は、効果がない場合もあります。吐き気が強い間は安静にする方が望ましい場合もありますが、積極的に身体を動かすことで耳石が元に戻って早く治る場合もあります。

低音障害型難聴

低音障害型難聴に対して、排泄障害により多く溜まり過ぎた蝸牛内のリンパ液(内リンパ水腫)が原因となっている可能性があり、尿としてリンパ液を出しやすくする利尿剤などを使った治療を行います。他にステロイドを使う場合もあります。再発することもあるため、治った後もストレスを溜めこまず、十分な睡眠をとって、疲れすぎないように注意しましょう。

突発性難聴

早期に治療を開始することが重要です。難聴の程度を調べた上で、ステロイドやビタミン剤、血流改善剤を使った治療を行います。ステロイドに関しては、最初に多く使用し、徐々に減らしていく必要があり、急に使用を中止すると身体に大きな負担をかけることにもつながります。症状が急に改善した場合にも、医師の指示を守って服用してください。
治療に反応せず、難聴が持続する場合もあります。治療開始が遅かった場合、難聴の程度が強かったり、めまいを併発している場合、また高齢の場合には治りにくいとされています。
突発性難聴は、一度きりの病気です。そのため、難聴を繰り返す場合には、メニエール病や聴神経腫瘍などの他の病気の可能性があります。そのため、きちんとした検査と診断が必要です。

岩野耳鼻咽喉科の診療時間・アクセス(豊中市:服部天神駅徒歩1分)