難聴予約外来

難聴予約外来の開設

難聴にお困りの患者さんを対象とした予約制難聴外来を作りました。
対象とする病気と、その対策を次の表にまとめました。ご参考にしてください。

病気の名前 よく起こる年齢 対応
慢性中耳炎 年齡無関係 保存的治療による耳漏停止、手術的鼓膜閉鎖
老人性難聴 高齢者 補聴器の装用、人工内耳

診察時、鼓膜の状態のチェック、聞こえの検査である純音聴力検査、言葉の理解を検査する 語音明瞭度検査などを行い対応を相談し、適応があれば、補聴器外来を予約いたします。

難聴外来:毎週月曜日 9:00、10:00、16:00、17:00
      当院のホームページより WEB予約をしていただきます。
補聴器外来:第2・4月曜日 13:30、14:00、14:30、15:00、15:30、16:00
      第2・4金曜日 13:00、13:30、14:00
      補聴器外来の予約については、診察後の予約となる為、 WEB予約での予約はできません。

慢性中耳炎について

反復性あるいは持続性の耳漏(耳からの分泌物)と難聴を伴う中耳を中心とした粘膜、骨の慢性炎症と定義されています。大きく2つの種類に分類され、慢性単純性中耳炎は鼓膜の中央部の鼓膜緊張部に穿孔を認め、中耳腔の粘膜の炎症であるのに対して、鼓膜の上方(鼓膜弛緩部)や辺縁(緊張部辺縁)に穿孔のある真珠腫性中耳炎では、中耳腔の周りの骨の病変を伴い、大きな合併症を起こす危険性があります。

詳しくはこちら >

補聴器の装用

難聴に対する補聴器の役割

話しかけられたときに聞き返すことが多い、テレビの音量を上げないと聞こえなくなった、会話をしても聞き返すことが多くて不自由を感じる、病院の待合室や銀行の窓口で名前を呼ばれても気がつかない等、生活面で不便さを感じて補聴器が必要かなと思ったら、一度耳鼻科へご相談ください。
補聴器は市販されているので誰でも簡単に購入することが可能ですが、個々の状態に合わせて綿密な調整が必要となります。低い音から高い音までの音域の中で、聞こえ方は人それぞれ異なります。たくさんある補聴器の中から、最適なものを選択して細かな調整をしないと、よく聞こえません。
当院では、補聴器に関するご相談やアドバイスはもちろん、ご希望の方には補聴器の作製も行っております。聴力障害が一定基準を超えて身体障害の認定を受けた方は、補聴器の作製は公費で行うことができます。気になる方は、お気軽にご相談ください。
お手持ちの補聴器の聞こえ方を調べることもできるので、気になる方は補聴器をお持ちいただき受診してください。

補聴器は、難聴を治すための治療機器ではありません。『聞こえ』を改善・サポートするための医療機器です。長年、難聴の症状があって脳が音に対して弱くなっている方の場合、補聴器を付けてもうるさいと感じることが多いようです。補聴器で『聞こえ』を改善すると、脳への刺激が増えて認知症の予防にも効果があるといわれています。日常生活で聞こえ方に不便を感じる方は、一度ご相談にお越しください。

補聴器の装用の流れ

1.診断・検査

難聴の症状がある場合、内視鏡や顕微鏡を用いて耳垢や慢性中耳炎があるかを調べていきます。補聴器の適応の有無を判断するために、純音聴力検査をおこないます。

2.補聴器相談・試聴

補聴器を付ける耳を決めるために、語音聴力検査で言葉の聞き取りの程度を調べます。語音聴力検査ではその他の目的として、補聴器を付けた時の効果の目安や身体障害の認定、補聴器装着後の効果判定のために必要な検査となります。
検査が終了したら、ご都合の良い日程で補聴器外来の予約をお取りいたします。
補聴器外来では認定補聴器技能者の立会いの下、補聴器の使用目的や使用環境を詳細に伺って、最適な補聴器の機種を選択いたします。実際に補聴器を装着して細かな調整を行い、試聴器を貸し出しして装着の指導いたします。

3.補聴器点検・調節

補聴器を実際に装着して、1~2週間ほど過ごしていただきます。その後、改めて補聴器外来を受診していただき、実際に使用したときの感想を詳しく医師に伝えていただきます。
聞こえ方や装着のフィット感などを細かく確認して、調整を行ったり機種の変更をしていきます。ご自宅で、実際に補聴器を付けて試聴していただき、必要に応じて再調整や機種の変更をおこないながら、最適な補聴器を選択していただきます。

4.補聴器の選択・作製

何度か調整や機種の変更などをして、試聴していただいた上で、費用面や患者様のご希望を考慮した上で、最適な補聴器を決定します。あまり効果が感じられなかったり、付けていて違和感が出てきた場合は補聴器の返却も可能です。
雑音下での言葉の聞き取り検査や補聴器適合検査などの検査結果をもとに、補聴器の調整を行っていきます。

5.補聴器フィッティング

補聴器を装着して、「聞こえ」にあわた音の調整を行います。装着の仕方や補聴器の操作説明、お手入れ、保管についてご説明いたします。

6.アフターケア

補聴器を付けて生活をしていると、今まで気がつかなかった自分の声や生活音が気になるようになったり、長時間装着していると違和感を覚えることがあります。些細なことでも気になる事があれば、微調整やアフターフォローにも丁寧に対応させていただきます。
実際に補聴器を装着して生活しながら、状況に合わせてその都度、調整を繰り返していきます。
フィット感や雑音が気にならない程度まで調整が済んだら、その後は点検やクリーニングを定期的に行います。

 

人工内耳について

聴覚障害をお持ちの方で補聴器での効果が得られない場合、人工内耳という人工臓器による治療の選択肢があります。人工内耳は、世界で最も普及している人工臓器のうちの1つで、音を電気信号に変換して、音の刺激を脳へ伝えます。効果には個人差があり、手術直後から「聞こえ」が改善するというわけではありません。
人工内耳を通して聞こえてくる音は、合成された機械的な音なので手術後はしっかりとリハビリテーションを行う必要があります。
リハビリテーションの継続は、本人が積極的に取り組む姿勢と家族の支えが不可欠です。リハビリテーションを続けていくことで、様々な音が徐々に聞き取れるようになっていきます。

人工内耳の適応について 

補聴器でも効果が得られないことが認められた場合、人工内耳の適応と判断されます。
人工内耳手術は、1998年4月に日本耳鼻咽喉科学会から発表された適応基準があります。成人の場合、90デシベル(dB)以上の高度難聴で、さらに補聴器の効果が得られないことが基準とされています。
低音の残存聴力を活用した人工内耳「残存聴力活用型人工内耳」は、500Hz未満の周波数において、ある程度聴力が保たれている方が適応となります。
残存聴力活用型人工内耳は、2014年にガイドラインが発表され、500Hzまでが65dB以下、2000Hzが80dB以上、4000Hz以降が85dB以上で、さらに補聴器を付けて静寂下語音聴取能が60%未満の場合、適応基準とされています。
手術には、全身麻酔を使用します。全身麻酔の手術が可能であれば、特に年齢の制限はありません。手術後のリハビリテーションをしっかりと継続していただく必要があります。
お子さまの場合、適応基準が異なりますので、詳しくはご相談ください。

術前検査

人工内耳には、明確な適応基準があります。補聴器でも効果が得られなかった場合、以下の検査で聴力レベルを調べて手術を検討します。

CT検査

CT検査では、中耳・内耳の状態を調べることができます。中耳炎などの炎症がある場合、手術が行えません。
まず、中耳炎の治療を行い、中耳炎が落ち着いてから人工内耳の手術を検討します。

MRI検査

MRI検査は、蝸牛の状態を調べることができます。蝸牛が髄膜炎や中耳炎で塞がっていると、人工内耳の電極を挿入するスペースが無くなってしまうため、事前にスペースがあるかどうかを調べる必要があります。さらに、蝸牛神経の状態や内耳奇形などの有無を調べることも可能です。

平衡機能検査

平衡機能を事前に調べておくと、術後に生じるめまいの予測がある程度わかります。平衡機能検査で、内耳にある前庭神経(体のバランスをとる神経)や半規管の機能を調べることができます。

手術後のリハビリテーション

人工内耳の手術を受けた後は、すぐに「聞こえ」が改善されるというわけではありません。
術後は、長期間にわたってリハビリテーションを続けて、聴覚や言語の発達を促していく必要があります。
お子さまの場合、生まれた時から難聴を持っているので、しっかりとリハビリテーションで聴覚や言語の発達を行う必要があります。こどもは自分の言葉で実際に聞こえている音を人に伝えることが難しいため、専門の言語聴覚士による綿密なリハビリテーションが不可欠です。さらに、病院が療育機関や保育所、幼稚園、学校などと連携をとりながらお子さまのリハビリテーションを進めていく必要があります。また、両親のサポートも重要になります。術後に、しっかりとリハビリテーションを継続していける環境を整えてあげることが大切です。
成人の方は、言語獲得後に難聴を発症することが多いため、脳に言葉の記憶が残っているので、脳に残された記憶と、聞こえてくる音を照らし合わせて少しずつ聞こえが改善していきます。回復には個人差がありますが、難聴の期間が長い方に比べて期間が短い方のほうが回復が早いとされています。人工内耳は、手術後も難聴の回復に向けて、リハビリテーションを継続していく前向きな姿勢が何よりも大切です。